アドフラウドって何?ネット広告を始めるなら知っておきたい【不正広告】
アドフラウドという言葉を聞いたことはありますか?ネット広告を始めようと考えているのであれば、避けては通れない言葉です。
アドフラウドはネット広告を活用していく【広告主】となるうえで、決して見逃したくない害虫のようなものです。それでは、アドフラウドがどんなものなのかを詳しくご紹介していきます。
アドフラウドについての基礎知識
アドフラウドは、日本のネット広告業界で、もはや蔓延しているといっても過言ではない問題のひとつです。もし自分が掲載している広告が狙われたら、すぐに対策しなければなりません。
アドフラウドとは【不正広告】
アドフラウドは、日本で不正広告と呼ばれています。また詐欺広告と呼ばれることもあります。アドバタイズメント(広告)という英語と、フラウド(詐欺)という英語を合わせた造語です。
アドフラウドはネット広告をおびやかす、ネット広告のシステムをたくみに利用した詐欺です。
ネットを利用した詐欺というとフィッシング詐欺や詐欺メールなどが知られていますが、それらとは全く異なります。
アドフラウドは、自社が出している広告を利用され、自社が支払っている広告料ををかすめ盗られたり、とんでもないサイトに自社の広告を表示されたりしてしまう可能性があるのです。
アドフラウドの種類
アドフラウドにはさまざまな種類があります。アドフラウドの被害に遭わない、また遭ってもすぐに気づけるようにするためには、さまざまな手口を知っておく必要があります。
隠し広告
ユーザーの目に見えないよう透明な状態で表示したり、非常に小さなピクセルで表示したりする不正広告です。
広告としては表示されていることになっているため、Google広告やYahoo!プロモーション広告などの管理者には不正と報告されません。しかし顧客にはまったく見えないという状態になっています。
過度に広告を詰め込む
ページに広告ばかり大量に表示される不正広告です。広告しか表示されないケースもあります。あまりにも大量に広告が詰め込まれるため、個々の広告をきちんと見られません。
管理者の見回り(クローラー)にはきちんとしたコンテンツを見せ、人間のアクセスには広告ばかりのページを見せるという手法もあります。
指定とは違った場所に広告をばらまかれる
ネット広告、とくにディスプレイ広告の場合、広告を表示したいサイトを特定することができます。
たとえば子ども向けの教材や健康食品、経済・経営に関するサイトなどは、健全なサイトに表示することで信頼度がアップします。
しかし指定とは違う場所にばらまかれてしまうと、ターゲットとする顧客にまったく見てもらえなくなります。
ばらまかれた場所がいかがわしいサイトだったりすれば、企業や商品の品格まで疑われかねません。
顧客に見てもらえないばかりか、たまたま閲覧したユーザーからの信頼も失ってしまうのです。
自動更新
広告表示や表示されたページを何度も自動的に更新させ、広告が何度も表示されたように回数を水増しする方法です。
1秒1回など時間ごとに決められた回数更新される場合と、実際に見ているユーザーがスクロールなどをすると何度も更新される場合があります。
また動画再生サイトだと、ユーザーの滞在時間は長くなります。そのため、動画を見ている間に何百回も表示されたことになっているケースもあります。
クリックかさ増し
クリック洪水とも言われます。ユーザーが実際にクリックした広告に、不正な水増しをすることです。
一度ユーザーが広告をクリックすると、情報が不正業者に紐づきます。そのままずっと追跡され、さらに端末のIDをあちこちにばらまかれてしまいます。
無数の釣り針をばらまいて待つようなものです。その間、釣り針につけたエサ=広告クリックに対する課金は、広告主から不正に搾取され続けます。
いつかIDの持ち主がアプリのインストールや課金などをするときまで、不正な搾取は続きます。
その間にクリックした広告は水増しされたもので、成果とはほぼ関係しません。しかしすべて成果として不正業者が横取りしてしまうのです。
クリックかさ増しで行われるクリック洪水は、正規の広告がクリックされてダウンロードがスタートすると、割り込んできて成果を途中から横取りしていきます。
アプリのインストール水増し
端末を何台も用意して、アプリのインストールとアンインストールを何度も繰り返します。短時間にたくさんのインストールが行われたとカウントされてしまいます。
また1台の端末のIDを次々とリセットし続けることで、複数の端末でインストールを行うようにしむけることも可能です。
ボット・なりすまし
ボット(プログラム)はTwitterなどでもよく見かけますが、悪用する業者もいます。
ボットを使ってサーバー上で操作を行い、ブラウザ上ではあたかもクリックやインストールなどをしたように見せかけます。
中には不正なアプリを使って、別のアプリになりすまし、その中でクリックやイベントが行われたように見せかけます。
正規のアプリになりすますことで、まったく閲覧されていない広告の課金を広告主に払わせるのです。
アドフラウドによる被害
アドフラウドに狙われると、さまざまな被害を受けることになってしまいます。
広告が効果を発揮できず、無意味な広告費を払わなければならない
アドフラウドによって閲覧やクリックが水増しされると、広告主は顧客に見てもらえていない広告に対して対価を払うことになります。
ブラウザの向こう側にいるのが本当の顧客なら、実際に閲覧されたりクリックされたりすれば、何らかの効果を得ることができます。
閲覧するだけでも商品を覚えてもらえたり、良いイメージを持ってもらえたりする可能性があります。
しかし実際には、ボットがプログラムで機械的にクリックしているだけかもしれないのです。それでは広告効果は一切望めません。
またネット広告の多くは閲覧・クリックに対する課金制になっているため、ボットによる機械的なクリックであっても、広告主がデポジットしておいた資金は搾取されてしまいます。
企業や商品のイメージがダウンする
いかがわしいサイトやアンダーグラウンドなサイトなどに広告をばらまかれてしまうと、企業や商品の質まで疑われかねません。
出した広告のデータが信頼できなくなり改善が難しくなる
データ上は1万あった閲覧が、実は数百しかなかったなどという場合、その後広告をよりよいものにしていくためのデータを正確に把握することができません。
広告は1度出せばOKというものではなく、定期的に効果に関するデータを調査して、より効果的な広告になるように修正していくことが重要です。
しかしアドフラウドが大量に混ざっているデータは、情報として信頼できません。広告を改善していくことができなくなってしまうのです。
実は、アドフラウドによる被害はかなり大きく、1年で30%もの増加が確認されています。経済被害だと、2018年の被害総額は120億円にのぼるとされています。
日本は今、アドフラウドの経済被害が大きな国のうち上位4位に入っています。消費者物価指数(CPI)が高い国が被害に遭うことが多く、日本もターゲットにされているのです。
誰がアドフラウドをたくらんでいるの?
では、いったい誰がアドフラウドをたくらんで実行しているのでしょうか。一部のアドフラウドは、システム管理やセキュリティソフトによる自動アクセスなど、悪意のない原因で起こります。
しかしそれらのアドフラウドはごく一部です。アドフラウドの多くは、悪意を持った人間が自分の利益などのために、ボット等のプログラムを使って行っていると考えられます。
価値のあるコンテンツには、たくさんの閲覧者が訪れます。そこには実に有益な情報がたくさん掲載されており、いろいろな人々とのコミュニケーションも生まれます。
価値あるコンテンツは、広告主にとっても有益です。コンテンツが素晴らしいものなら、信頼性という付加価値も期待できます。
またたくさんの閲覧者が訪れるため、自社の広告が掲載されれば閲覧・クリック・サービス利用という成果につながりやすいからです。
しかしアドフラウドを行う違法業者は、価値あるコンテンツを持たないことがほとんどです。
価値のあるコンテンツを作るにはお金と時間、多くの優れたクリエイターが必要になるためです。
そこで、違法業者は価値あるコンテンツを持つ業者や、そこに広告を出す広告主に気づかれないよう、広告をクリックしてからダウンロードされるまでの一瞬のスキを狙ったり、ボットに不正クリックをさせたりして収益をかっさらっているのです。
アドフラウドが話題になった理由
アドフラウドは、アメリカなどでは数年前から話題となっていましたが、日本ではあまり話題にのぼりませんでした。なぜ急に注目されるようになったのでしょうか。
アドフラウドによる被害が日本で増えたから
アドフラウドによる被害が、日本で急激に増えてきたからというのが大きな理由のひとつです。日本でも、ネット広告に関する違法行為は以前から存在していました。
これまでは決済詐欺や不正アフィリエイトなどの違法行為が行われてきました。しかしそれらを駆逐すべく対抗策もどんどんとられるようになります。
その結果、これまでの詐欺方法では効率が悪くなった違法業者たちが、より簡単かつ効率的に詐欺行為が行えるアドフラウドに乗り換えたと考えられています。
また日本では注目されるまでにアメリカなどよりも少し時間がかかったため、全世界の違法業者たちの目が日本のサイトに集まってしまったとも考えられます。
アドフラウドによる被害額が大きくどんどん進化するから
アドフラウドによる被害額は、日本全国レベルですでに100億円を超えています。今後ますます増えるのではないかと危惧されています。
アドフラウドに対して、日本でもすでにさまざまな撃退処置が行われています。それは非常に分厚い鋼鉄の壁と言えるものですが、違法業者はなんとかして蟻の一穴をこじあけます。
ひとつ穴があいてしまうと、次々に違法行為が集中し、その方法がトレンドになってしまいます。
それに対する対抗策が講じられ、さらに分厚い壁が造られますが、またいつかこじあけられるのです。
この繰り返しで、アドフラウドの方法はどんどん複雑で巧緻なものになってきています。また方法自体も増えています。
アドフラウドを見抜いて撃退する方法
アドフラウドを放置していると、大切な広告資金がどんどんかすめ盗られてしまいます。しかも広告効果が得られず、企業イメージまで落ちてしまうかもしれない、とても恐ろしい害虫なのです。
そんなアドフラウドを見抜いて撃退するためには、どうすればよいのでしょうか。対抗策をご紹介します。
アドフラウド対策ツールを使用する
毎日無数に踏まれる広告ひとつひとつを監視することは不可能です。そのため、さまざまなネット広告専門業者が、アドフラウドに関する対策ツールを開発しています。
インターネットやプログラミング、ネット広告に関する知識が高く、自分でツールを上手に活用できるのであれば、すぐに対策ツールを使用して、アドフラウドを見つけ出し退治しましょう。
またアドフラウドはコンピューターウイルスと同じように、日々新たなものが生み出されています。対策ツールも一度入れれば安心、という訳ではありません。
プロに管理を依頼する
アドフラウドはもちろん、ネット広告に関する知識は一般的なものしかないという方、またプログラミングやアドフラウド対策に特化した事業部などを持たない企業や個人事業者は、やはりプロに管理を依頼することをおすすめします。
アドフラウドはパッと見て分かるものとは限りません。自分の企業の広告は大丈夫と思っていても、ブラウザ上ではなくサーバーの内部で詐欺が行われているかもしれません。
広告は、企業にとってたくさんの人に商品やサービスを知ってもらう名刺のようなものですね。広告費は、企業や事業者にとって大切な運営資金です。
広告も広告費も、どちらを傷つけられても企業・事業者にとっては大きな痛手です。見えない傷が致命傷になってしまう前に、プロに対策をお願いしましょう。
アドフラウドは広告効果や資金を食い荒らす害虫!
アドフラウドは、大切な庭木を外から内部から食い荒らし、枯らしてしまう害虫のような存在です。
どんなに国や警察が警告しても、特殊詐欺が無くならずどんどん進化していくように、アドフラウドも日進月歩で進化しています。
ネットという、上手に活用すればたくさんの人に自社商品やサービスを知ってもらうチャンスに満ちた、非常に有益な媒体を、アドフラウドは恐ろしい害虫の巣にしてしまいます。
その魔の手は、すでに精魂込めて作り上げた広告や、捻出した広告費に伸びているかもしれません。
まずはプロにアドフラウドの影響を見抜いてもらい、適切な方法で撃退してもらいましょう。